武装解除 -紛争屋が見た世界 (講談社現代新書)

NGOとは何か―現場からの声」の伊勢崎氏、その後の人生も凄いです。日本に戻ってきたかと思ったら所属先のNGOとはケンカ別れ、大学教員になれば武装解除ミッションでアフガンへ、などなど、読んでる方がクラクラする。
正直、本の序盤は萎えた。著者の半生の激しさもさることながら、こういう闘争的というか、自分と見解・志向が異なる人を(差異の認識としてでなく)すぐに否定的に断ずることのできる人ってあまり好きじゃないんだよね。彼が人生で実行して達成したことを誇りに思ってそれを肯定するのは構わないけれど、彼が捨て去った建築・都市計画の分野とか関わった国際開発の関係者とかをほとんど相対化せずに大した根拠もなくどうしてこうまで自信満々に否定できるのか?という違和感は消えることがない。
ただ、いざ本題に入ると著者の情熱と現場の迫力に引き込まれ、人間性の些末な部分は(ある程度)どうでもよくなってくる。確かにこの人が達成してきたことにはケチがつけられない。紛争の停止、武装解除が全ての「開発」の前提であるということ、開発に携わる者としてのプロ意識、国連の平和維持活動の実態と日本国内での議論の絶望的なズレ、将来的な日本の国際貢献の可能性など、全く賛成かあるいは生半可な知識や経験ではその骨太の現実感覚の前に反論の余地なし。必読の一冊である。
しかし、著者が「アフガン・ファン」とか「ティモール・ファン」とか呼んでるのが具体的にどういう人たちなのかよくわからんが、武装解除段階でごちゃごちゃ言うのがうざいというのはわかるけど、長期的な開発戦略を軽視しすぎてない?現在の職務に忠実なのはいいけど、「NGOとは何か―現場からの声」と論旨が違いすぎる気が・・・。「武装解除の優先」という大義名分に守られてるだけで、開発自体に関しては国際機関や人類学者系の人間をそこまで否定できるだけの展望を示しているとは思えない。