金融史がわかれば世界がわかる―「金融力」とは何か (ちくま新書)

あの倉都さんの本ということで大いに期待が膨らんだが、ちょっと期待外れに終わったか。「学問的な国際金融論とは趣を異にする」と銘打った割には金融史の描写自体は通り一遍で、新書だったら学者が書いたってこんなような内容じゃないの?という印象。経済力に対置させる「金融力」というアイディアは非常によかったと思うのだが、それだったらそれぞれの時代における「金融力の源泉」という視点を前面に出して、実務者の立場からもっと好き勝手に「金融力」のダイナミズムを語ってほしかった。「現在のアメリカの金融制度はこれこれの点が評価されてる、だから金融力がある」みたいな話に感じられてしまう。「なぜ、現在の資本市場では、それが『金融力』につながるのか」についても、あのメルマガの倉都さんならもっと掘り下げられたはず。
タイトルといい、これは編集者にも責任ありかな。倉都さんの良さがイマイチ出てない気がする。