井上達夫『他者への自由』
多様なる「善き生」を追求する基盤となる存在論的・認識論的な各種の特殊構想から独立した基本構造としての、「正義の基底性」という国家像。(第1章)
権力の主体問題の枠を超えた、権力そのものに対する批判的問題意識の基盤としてのリベラリズム。同じ志向性を持ちながらリベラリズムと対立する階級的国家論とアナーキズムからのリベラリズムの擁護。階級的国家論の問題点は、社会的対立の多様性を「階級対立」という視点に一元化して回収しようとしたこと。市場アナーキズムフリーライダー問題と疑似国家の出現を生む。共同体アナーキズムはその想定する共同体的安定が現代的諸条件の下では困難であるため、共同体的社会統制が充分に実効的でなく、したがって国家(的な社会統制)を完全に無用化できない。(第2章)