金融庁の暴走とそれを容認するマスコミ

最近の金融庁は、何か変。最近じゃねえだろというツッコミもありそうだが、とりあえず最近は輪をかけて変。
昨日の報道では、不動産投融資の過熱警戒・金融庁、リスク管理徹底要請へ(NIKKEI NET)ということなのだが、そもそも「不動産投融資の過熱を警戒」するのって金融庁のやるべき仕事なのか?
なぜ金融業界に規制が必要かというと、(1)融資先や取扱商品について情報を開示しない誘因が存在し、株主や消費者(預金者・取引先・個人投資家)との間に情報の非対称性がある、(2)破綻時に連鎖的な金融危機を招くシステミックリスク、(3)マネロン等、反社会的勢力との取引の可能性、といったところが挙げられると思うが、情報開示の重要性はともかくも、特定セクターへの投融資が偏ってるかどうかということ自体は金融庁が判断することとは思えない。これだけ民間民間言ってる時代に、各金融機関よりも金融庁サマの方が「どのセクターにどれだけ投融資するか」について合理的な判断ができるとでも思っておいでなのだろうか。
こうした「口先介入」にとどまらず、不動産金融関連で金融庁による検査が連発、処分が乱発されていることは現在金融業界を離れているbroadmindですら常識として耳にすることである。金融業界人は一般にマスコミを嫌っているし、さらなるバッシングや政治的な動きに巻き込まれるのを恐れてあまり声を上げていないのだろうが、個人的には上記の通りあまり合理性のない熱の入れようだと思うし、多分に恣意的でないかと思われる事例も散見される。
しかも、これだけ公務員バッシングが盛んな折りになぜかマスコミは金融庁に対してはあまり批判的でない。これも理解に苦しむところだ。まず、事前規制より事後規制ということで金融ビッグバンなるものがもたらされたわけだから、望ましい事後規制のあり方というのが議論されて然るべきなのにこれがほとんど欠落。事後規制だと悪事(のみ)が自動的に暴けて、そこに恣意性が入る余地はないとでも思っているのだろうか?あるいは、バブルの再来を恐れるあまり、資産価格上昇、ひいては景気回復自体を妨害しようという国賊(藁)ぶりは日銀と共犯関係か?
金融庁自体にも不満はあるが、放任されていれば肥大化していくのは公共セクターの常なので、要は相変わらず経済ジャーナリズム、金融ジャーナリズムというものの不在を強く思い知らされるわけである。「金融の国際競争力」みたいなフレーズもよく耳にするが、ニューヨークロンドンどころか、こんなんで香港やシンガポールとも勝負できると思っているのだろうか*1
この文脈で思い出すのは、かつての東京都の外形標準課税問題。そもそも、「国際競争力」というような経済学的にあまり意味のない概念を振りかざすのは大好きなくせに、珍しくその言葉が意味を持ちそうなときに限って誰もそれを取り上げない。国際比較の視点からこの問題を論じた記事はほとんどといっていいほど目にしなかった。自由化って言ってるのに、ムダに規制や税金の多いところに誰も金融の拠点なんか設けたがりませんよねというロジックには背を向け、現在に至るまでハゲタカがどうしたとか、銀行は最高益出してるのに税金納めてないのはおかしいとか、共産党顔負けのプロパガンダっぷりである。


あー、金融庁批判からスタートしたのにまたマスコミの悪口で終わってしまった。
とにかく、「不動産金融にはひょっとするとバブル気配があるのかもしれないが、そんなのは金融庁が介入して解決する問題ではないし、また金融庁が介入すべき問題でもなく、そういうことを批判的に取り上げられないマスコミは池沼」ということが言いたかった。

*1:追記:と思っていたら、香港は思わぬ脆弱性を露わにしたようだが・・・。ま、東京も地震あるから他人のこと笑ってる場合じゃないけど