勝てない騎手について考える。

プロスポーツである以上、競争があり、淘汰がある。しかし競馬が他のスポーツと異なる点として、①馬には条件分けがあるが、騎手にはデビュー当初の減量特典等、一部の例外を除くと条件分けがない、②従ってデビュー直後の騎手は何らかの形で騎乗機会を与えられない限り、自力で騎乗機会を増やし結果を出すことが困難、ということが挙げられる。
このように考えると、減量特典が無くなって勝てなくなるのは競争原理の必然としても、そもそもデビュー時からほとんど勝てない(場合によっては騎乗機会自体が無い)ような騎手が少なからずいるのは本当に騎手(だけ)の責任なのかということが問題となる。これは、そもそも騎手試験に合格させてはいけなかったか、バックアップする気のない厩舎に所属させてしまったかのどちらかだろう。
野球やサッカーのようにどこでも技能を向上させられる類のスポーツではないのであるから、技術的にどうしようもない人間を資格試験に通しておいて、「卒業してプロになったら自己責任です」という態度を取るつもりだとしたら、競馬学校(ひいてはJRA)も恥を知るべきである。また、新人騎手が実質自分で選ぶことのできない所属厩舎で運命が決まっているとしたら、各厩舎から強制的に一定頭数を出走させて抽選で新人騎手に騎乗馬を与えるレースを設ける(現在の若手騎手限定競走の拡大版)等の措置も必要ではないか。
一方で、そういう勝てない騎手でも騎手を続けられてしまうということも当然問題である。これでは、競馬界として「勝てないかもしれないような人も騎手にしますし、騎手になったからといって騎乗機会があるとは限りませんけど、まあそれでも食べてはいけますから」と言ってるのと同じことで、二重三重にプロスポーツとしておかしい。
JRAは昨秋はディープインパクト効果の最大化にご執心だったようだが、馬は数年のうちにいずれにせよ引退する。10年、20年のスパンで競馬の人気とレベルと支えていける若い人材がどれほど育っているのかということも少しは考えた方がいいのではないだろうか。