中国残留孤児について

http://www.asahi.com/national/update/0706/TKY200507060096.html
中国残留孤児の国家賠償請求訴訟の第一号判決が下った。原告側の全面敗訴という結果である。私は法律自体は全くの素人であるが、報道を見る限り、日中国交正常化の後、訪日調査開始までに時間を要したこと等はベストプラクティスではなかったにしても司法を通じて国の責任を問うのは困難であり、判決自体は妥当と思う。
しかし、戦後の混乱の中で不本意ながら子供を置いていかざるを得なかった親の無念や、中国で辛酸を嘗めながら育ち、なお祖国に戻りたいと願い続けた孤児達の思いを想像すると、非常に複雑な気分である。私の父も満州生まれで、運が悪ければ残留孤児になってもおかしくなかった。このような司法的な手段を通じての救済が不可能であるにしても、政府には残留孤児にできるだけの生活支援をしてあげてほしいとは思う。
ところで、この問題で一番腹立たしいのは、2ちゃんねる等の掲示板における論調である。私は「ネット右翼」というような安易な括りで語ることには反対であるし、中国や韓国に対しても場合によっては毅然とした対応を取ることには大いに賛成であるが、残留孤児はあくまでも戦争の犠牲となった日本人の問題であるにも関わらず、中国で苦労した同胞に対してなぜ多くの侮蔑的な書き込みができるのか理解に苦しむ。「中国人に育てられた」「いつまで経っても日本にとけ込まない」「親戚を大勢連れて来てそいつらが犯罪を犯す」といったところが代表的な(彼ら彼女らなりの)理由のようだが、少なくとも一部の人間には――少数であると信じたいが――こうした想像力の欠如したとした言いようがない言説がまかり通ってしまう状況には反論の気力も萎えるほどである。
若い世代の「右傾化」が(これもほんとかどうかよくわからないが、そうした傾向が実際にあるとすれば)結局は愛国心や同胞愛よりも、自分と少しでも異質なものは排除し、自分にとって都合の良いもののみが視界に入るような均質で心地よい空間を守りたいだけの偏狭な自己愛に基づいていることを見せつけられるようで非常に暗い気分になる。