間違い電話

会社にいると、一日平均5件くらいは間違い電話がかかってきます。私はアメリカ人(その他多くの非日本人)と違ってこういう数字で誇張はしませんので、一日平均5件といったら5件です。もっと多いかもしれない。正直うざいです。
メールやSkypeが発達した現在、海外の顧客が自分の回線に直接電話をかけてくることはほとんどないため、外線電話の7〜8割は間違い電話といっても過言ではないでしょう。間違い電話は全て国内からで、しかも現在の部署では国内の顧客はいないので、番号通知を見れば間違い電話かどうかは取る前からわかります。「クライアントを待たせないため、部署にかかってきた電話は(同僚・上司にかかってきたものも含め)全て3コール以内に取れ」という新入社員教育を受けたbroadmindとしては電話が鳴ると手が勝手に受話器を取ってしまうこともあるのですが、最近は番号通知が国内の場合は無視して電話を取らないことすらあります。
なぜたくさん間違い電話がかかってくるのか?これには理由があって、「中途半端に頭のいい人が気を回すとロクなことにならない良い例」の一つだと思うので紹介しておきましょう。
勤務先の電話番号は全て「632」で始まります。実は、フィリピンの国番号が「63」でマニラの市外局番が「2」なので、「電話番号の下四桁(=内線番号)さえ覚えていれば、市内通話は632+内線、海外からは632632+内線」とかければいいことになり、海外在住の日本人にとっての「813」と一緒で632くらいはみんな覚えていますから、余計な番号を覚えなくていい、わー便利、こんな番号を割り当ててもらってステキー、という寸法なわけです。
カンのいい人はもうわかったと思いますが、ここにはしかしながら重大な落とし穴があるのです。
日本でも海外との取引が多い企業は会社の電話番号に「+81」から表示していることがあると思います。フィリピンの場合はこの傾向がもっと顕著で、マニラにある企業の多くは「632」から電話番号を表示しています。したがって、マニラ市内からかける場合は、632の次の番号からダイヤルすればいいことになります。しかし何せここはフィリピンでありますから、「国番号」というような概念を理解していない人間は一杯います。フィリピン人の多くは電話をかける際、thinkなどという行為に及ぶことは当然にありませんから、機械的に書いてある番号を押します。「市内にかけるだけで10ケタも番号を押さなければいけないのか」などという疑問が頭をよぎることも恐らく彼らにはないのでしょう。つまり、632・・・にかけるわけです。これは本来国番号ですから、市内通話でいきなり632からかければどうなるかというと、もうおわかりですね、うちの会社にかかってくるわけです。
人によって多少はありますが、多くの社員にこうして日々間違い電話がかかってきます。自分の直通番号だけでこれなので、会社全体では一日数千件単位の間違い電話がかかってきていることでしょう。「間違っている」と伝えても何度も同じ番号にかけてくる輩もいるので、結構なうざさです。フィリピン当局が気を回してくれたのか、昔の社員が要求したのかわかりませんが、この「632」から始まる電話番号はかなりのbad ideaだといわざるを得ません。とはいえ、こういう「ちょっと考えればわかりそうなもんだけど、見落としがち」な小賢しいアイディアというのは自分も時として提案しているような気もするので、自省も込める必要がありますね。