元日

実家が申し込んでくれた海外おせち宅配サービス(色んな商売があるね)と先日の一時帰国時に持ち帰ってきた諏訪泉純米原酒でなかなか豪勢な正月。これに妻の作ってくれたお煮染めとお雑煮も加わった。
夜は妻が図書館から借りてきた「日の名残り」のDVDを二人で鑑賞。ことあるごとに言っているので友人諸兄姉にはしつこいと思われるかもしれないが、これは傑作。原作も映画も大傑作。文学ものの映画化は期待外れに終わることも多いが、この作品では原作のテイストとメッセージを外すことなく、映画的意匠と演出の下に再構成することに成功している。アンソニー・ホプキンスエマ・トンプソンが最凶。「Miss Kenton」「Mr. Stevens」と名前を呼ぶのを聞くだけでそのド英語っぷりと微妙な感情に萌え萌え。その上、周囲を固めるジェームズ・フォックスクリストファー・リーヴ(!)、ヒュー・グラントらも完璧。哀しいのに何度でも観たくなる映画だ。
日本生まれのイギリス人作家、というレッテル貼りも今さらだが、残酷なほど冷静に、しかし慈しみをもってこのもどかしいキャラクターを描き出したカズオ・イシグロの技量には改めて脱帽だ。これまたしつこいが、broadmindは私小説が嫌いなので、この作品のように非私小説的設定の下で人間にとって基本的かつ重要なテーマを豊饒なストーリーに乗せて語らせられる作家は非常に高く評価する。この作品は究極のわびさび小説であり、その究極のイギリス映画化だ。この暗さがクセになる。
あ、単なる元日の日記なのに日の名残りマンセーエントリになってしまった。まあ一言でいえばとても良い正月だということだろう。