春(というより夏近し)

怒濤の一週間をくぐり抜けて週末を迎えると、世の中は春になっていた。こちらの春というのは日本(というのは不適当で、東京というべきか)の春と異なり、「気配」というようなものは抜きに唐突に訪れる。つい二週間ほど前までは雪がちらつき、人通りの少ない街をコートを着て震えてながら歩いていたというのに、いまや花は咲き乱れ、ストリートミュージシャンは繰り出し、お姉ちゃん達はタンクトップを着ているわけである。
まだまだここより気候が極端なところは地球上にいくらでもあるので、ストラヴィンスキー春の祭典』ほどの強烈な世界ではないだろうが、やはり東京に比べると「穏やかでうららかな春」という従来の春のイメージに対して多分に「暴力的」な春であることは否めない。やや極端な当地の人々の心性も気候と無縁ではあるまい。