ミッキー、感動(と万馬券)をどうもありがとう!

WINSや競馬場に行けなくとも、想像はつく。ルックス重視の女性ファンも、年季の入った競馬オヤジも、通ぶった競馬ヲタも、等しく心から声援を送ったに違いない。松永幹夫。関係者からも、ファンからも、誰からも好かれるジョッキーがステッキを置いた。
思えば、イソノルーブルが断然の一番人気となった桜花賞は、broadmindが最も初期に見た競馬のレースの一つであった。当時何も知らなかった中学生の自分は馬券を買ってすらいなかったが、「こんな人気になってる馬が蹄鉄外れたままレース走っていいのか?」という疑問と、松永幹夫の端正な顔が真っ青になっていたことだけは今でも良く覚えている。そしてシスタートウショウの猛追をハナ差凌ぎきってのオークスでの雪辱。あんなに若かったミッキーがケガでも成績不振でもなく、師匠である山本調教師の引退が間近で後継者にという事情はあるにせよ、言わばその騎手としてのキャリアを全うして引退するということがいまだに信じられない気分である。
しかし感傷に浸りつつも同時に予想をしないではいられないのが競馬ファンの悲しい性というもの。「引退レース、泣くバカ買うバカ買わぬバカ」とでも言えばいいのか、最後の雄姿に期待するファンはオッズを偏らせるし、場合によってはマイナー騎手も含め、最後の花道を飾らせてやりたいという関係者が有力な馬を用意して驚きの感動シーンがもたらされたり、はたまた「空気嫁」の事態を招いたりと、馬券的にも見世物的にも見逃せないレースとなることが少なくない。
broadmindのセオリーは「マイナー騎手の引退レースは無条件で買い」なのだが、ミッキーの場合は当然該当しない。しかも件の最終レースは彼の馬が断然の一番人気となっており、空気嫁の可能性もあるにしても相手もどうも定かでない。うーむ、見送りか・・・と思ったところが、どうも引っかかる。「阪急杯も乗るのか・・・」最終騎乗日の場合、メインでも引退騎手が乗ると人気過剰になることが多いが、松永幹夫騎乗のブルーショットガンはかなり穴馬のため、さしたる異常オッズにはなっていない。しかし、絶対来ないような馬かといえば、周りの人気馬も死角がある連中ばかりなので、こんな特別な日でなくとも、ちょっと穴馬として食指が動くような一頭ではあるのだ。しかも、最終レースのオッズを見た後だと、「異常オッズになっていないことが異常」にすら見えてくる。「ひょっとして阪急杯もありえるんじゃないか・・・?」ブルーショットガンから馬連総流しで買ってみた。
八百長があったかなかったか、broadmindには知る由もない。ブルーショットガンに全く不利がなかったことは確かで、まあ周りのジョッキー達も気を遣ってはいただろう。それでも、直線外からブルーショットガンが伸びてきたことは、やはり競馬の神様のイタズラ(それも、粋なイタズラ)だとしか思えない。自分の馬券のことも忘れて「ミキオ!!ミキオ!!!」と叫んでいる自分がいた。ゴールしてしばらくしてから、自分が久々に万馬券を当てたことに気が付いた。
最終レースでも有終の美を飾った松永幹夫はこの連勝で通算勝利数をちょうど1400勝に乗せて引退した。また一つ、自分の競馬史に大切な思い出ができた。