ネズミ人間は眠らない

自分は男の子だし、被害女児達よりはやや年上だったので特に自分がそうした犯罪の対象になるかもという恐怖を感じたことはなかったが、それでも同世代の人間にとって宮崎勤事件というのは幼年期の記憶に鮮烈な印象を残していることは間違いない。
彼の逮捕当日のことは今でもよく覚えている。確か、NHKの昼のニュースが終わる直前、最後の最後に情報が飛び込んできて一旦ニュースが終了。え?それだけかよ?本当に逮捕されたの?と戸惑うままに「昼のプレゼント」が始まり(すでに「昼どき日本列島」に改編された時期だったか記憶が定かでないが)、子供達のコーラスが始まったかと思ったら「これは臨時ニュースでしょう!」という母親の声に応えるかのように番組は中断し、再びニュースになったのだった。
詐病」とも「本当に精神病」とも言われた宮崎勤の奇異な言動、「オタク」の源流ともなった特異な嗜好と収集癖等々、個人と社会現象の両面から衝撃をもって分析されたこの事件であるが、一つだけ確かなことはこの事件以降、宮崎個人はずっと塀の中に拘束されているにも関わらず、「ネズミ人間」はどういうわけかその後も活動を続けており、現在に至るまでしばしば同種の猟奇的な事件を引き起こしているということである。
こうした猟奇的事件は、しばしば特定の時代背景と結びつけて因果関係が語られがちである。しかし実際のところ、果たしてネズミ人間は宮崎勤以前(ひょっとして近代以前)からずっと存在していて時折このような事件を起こしてきたのだろうか?それとも80年代日本の時代状況が産み出した新しい犯罪者なのだろうか?
冷静に例えば数字を見た場合に、金銭目的以外で児童が被害者となる犯罪がどれくらい増えているのかいないのか、broadmindはよく知らない。しかし、旅行直後ということも手伝って直感的な感想を述べると、例えばキューバにはネズミ人間は88年当時も、現在も現れないんじゃないかということである。もちろん、それが正しいのか、ただの先入観なのか、はたまたキューバでは代わりにサトウキビ人間が時折現れて子供達を殺しているのか、それを知る由もないのであるが。